環境問題に取り組んで
−授業で取り組んだ環境レポートづくり−
大阪府高槻市立城南中学校
安田 信彦
1.はじめに
 「理科嫌いの生徒が中学,高校に進むほど増える」というアンケート結果があるが,本校においても例外ではない。理科の正しい知識が受験学力と関連してより多く求められれば求められるほど,カリキュラムの消化に追われ,素朴な疑問を持つ生徒にきめ細かい対応ができず,積み残していくことになり,理科嫌いの生徒が増えるという悪循環がある。また,知識はかなりあるが,興味・関心に基づいた科学的な探究心や判断力が十分育っていない生徒もいる。
 本校ではこれまで実験・観察を大切にし,体験を通してつかむことの意義を重視して,できるだけ生徒実験を組み込んだり,コンピュータ活用の重要性を考え,取り組んできた。また,世界規模での環境問題の解決が急務となった今日,自然の原理・法則を科学的にとらえて判断できる力を培う必要性を考えると,理科教育の質的な転換と責任は大きい。断片的な知識ではなく,科学的に分析して総合的に判断できる力をどれだけ多くの生徒につけることができるか,そのためにはどうしたらいいか等を試行的に取り組み始めたところである。
 今年度は,21世紀に向けたカリキュラムを見通しながら,いくつかの教科で「2展開カリキュラム」による展開を行ってきた。具体的に理科では,3年の授業140時間を,105時間のA授業と35時間のB授業に分けて展開し,A授業で「科学技術と私たちの生活」「地球と人間」を除いた3年の単元を中心とした授業を展開し,B授業で「環境・エネルギー問題」「基礎の演習・復習問題」に取り組むことにした。
 本稿は,昨年の9月から11月はじめにかけて,B授業で取り組んだ環境論文づくりの実践である。

2.指導のねらい
 「地球と人間3 地球の環境保全」の単元は今までは,視聴覚教材を見せ,その感想を書かせて教師がまとめをするという授業を行ってきた。しかし今年度は,単に環境についての知識を与えて理解させるというのでなく,よりよい環境をつくっていくために,自ら判断し,行動できる能力や態度(下記)を育成するという目標を設定し,生徒が主体的に取り組む環境教育の授業づくりをめざした。
環境教育で育成をめざした能力環境教育で育成をめざした態度
(1) 環境の痛みを感じる心
(2) 自然や社会現象に対する関心・意欲・態度
(3) 環境に対する主体的思考
(4) 他人の信念・意見に対する寛容の態度
(5) 環境をよりよくしようとする社会的態度
(6) 環境への優しさ,価値倫理
(1) 環境を見つめる観察力
(2) 環境へはたらきかける表現力・情報収集能力
(3) 環境の成り立ちを理解する能力
(4) 環境の状況を数理的にとらえる能力
(5) コミュニケーション能力
(6) 環境問題を解決する能力
(7) 環境を評価する能力

3.学習の計画(全10時間)
第1次(2時間):地球の現在の環境を知る(視聴覚教材,プリントを使用)。
第2次(2時間):研究テーマの設定と計画
 1) 研究グループをつくり,グループごとにテーマを決める(参考資料の準備)。
 2) 研究の動機・目的(どうしてこのテーマにしたのか,何を明らかにしたいのか)を考える。
 3) 研究の方法を決める(いつ,どこで,どんなことを調べるのか。どうやって調べたらいいのか)。
第3次(3時間):調査・実験・観察(各グループごとに実験観察をする)
第4次(2時間):自分たちの調べたことを研究論文という形でまとめる。
*研究論文は,次の1)〜4)の形でまとめる。
 1) 序論(研究のテーマ,動機,目的,方法)
 2) 本論(研究・調査の結果)
 3) 結論(考察,今後の課題,感想)
 4) 巻末(参考文献,見学に行った施設,お世話になった人の紹介)
第5次(1時間):研究論文の発表(各グループごとに発表する)
 なお,研究論文は,すべて第1回関西中学生研究発表コンクール(毎日新聞,毎日中学生新聞,毎日放送,毎日EVRシステム主催)に応募した。
 主なテーマ:「酸性雨の植物への影響」「合成洗剤が植物に及ぼす影響」「芥川の汚れ」「淀川の汚染」「水の汚染:飲料水を作る」「廃油,牛乳パックのリサイクル」「食品添加物の害」など,全部で39テーマである。

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