主体的な探究活動を目指す単元末課題研究
1.はじめに
 本校では「理科に興味を持ち,意欲的に問題解決をできる生徒」を育てることを目指し,「課題研究」を各単元の教育課程の最後に位置づけ,生徒自ら興味関心のある課題に取り組むようにしている。ここでは本校の1年生の課題研究の取り組みについて報告する。

2.課題研究と教育課程
 課題研究では,各単元の内容を確認したり学習内容を深化させたり,また生徒の問題解決力や科学的思考力の伸長をはかるように指導している。
 研究内容は,授業で良い結果が出なかった実験,教師の演示に終わった実験,得た知識から発展させて独自に考えた実験など,創意工夫を加えた実験を行っている。
 配当時間は4〜5時間である。

3.1年生の課題研究の学習指導と評価
 1年生の植物の学習が終わったあとに最初の課題研究を行った。
 ここでは,
 (1)課題設定の仕方
 (2)研究の進め方
 (3)レポートのまとめ方
 (4)発表の仕方
を学ぶように指導している。
 単元末に課題研究を行うことを予告した上で,単元の学習指導の中で,資料集やビデオを使いながら学習内容に関連したトピックスを話したり,観察実験のまとめの中で「こんなことをしたらもっとおもしろいものが見られるよ。」など,課題研究のヒントを与えた。具体的には,種子の種類と地面への散布のされ方,また,それらの種子の模型が作れることを話したり,種子植物のまとめの学習をする中で受粉の様子やその後の花粉管の伸びる様子をビデオで見せたり,プランクトンの観察のときにどんな水にプランクトンが多いかを話すなどした。

  (1) 課題設定
 教科書の巻末の「きみも科学者」のページを活用して,課題研究の進め方,観察実験を進める際の注意すべき点を指導した。また,課題のヒントとして,授業で使っている理科資料集,『実験観察大辞典』(東京書籍),『理科実験大百科』(少年写真新聞社)などの課題研究のヒント集を提示した。

〈資料1〉生徒が設定した研究テーマ例
葉脈標本作り,気孔の観察,プールのプランクトンの観察,細胞分裂の観察,
花粉の観察,花粉管の観察,種子の中のようす,植物の吸水作用と花の色,
葉のつき方,原形質流動の観察

  (2)

 レポートのまとめ方
 課題研究のテーマが決まったところで,研究に使う試薬等が届くまでの間を利用して,レポートの書き方の指導を行った。光の導入単元「ものの見え方と光」で光が反射するときのきまりを見つけようという課題で,グループ実験を行った。そのレポートを「テーマ」「目的」「観察・実験の方法」「結果」「考察」「感想」という順序でまとめること,図や表を活用して他の人に見てもらうことを前提に作成することなどを指導した。

〈資料2〉レポート用紙

〈資料3〉生徒のレポート例


  (3)

 研究の発表
 1年生ではグループ全員が協力して発表するようにした。テーマ,課題設定の理由・目的,観察・実験の方法,結果,考察,感想の項目のいずれかを分担し,全員が発表するようにした。
 発表を聞く態度の育成と後述の評価をかねて,各グループで分担してポストイットに一言書くようにした。

  (4)

 評価
 評価は,課題研究を終えての感想や自己評価,発表を終えた際の相互評価によって行った。相互評価は,発表後に発表内容や態度に関してわかったこと,感想,アドバイス,わかったことをポストイットに書き,全グループの発表終了後に発表者に渡すという方法をとった。この相互評価を通して,生徒は自分の研究を客観的に見ることができ,自己評価や次の課題研究への意欲の向上に役立てることができたようである。

〈資料4〉相互評価の例
結果から新しい疑問が出てきて良かったと思う。
バラの先がきれいに染まっていて良かった。染まったのは緑だけだけど,赤 も葉まで来ていたから,もう少し待ったら花まで色がつくのかな。
気孔は少ししかないと思っていたけど,この発表を聞いていっぱいあるとわ かった。
葉脈はすごく多いし,太いのと細いのがあることが分かった。
アドバイス ちょっと声が小さいかな。
進め方や話し方がうまくて聞きやすかった。
授業のときよりも気孔のことを知ることができた。朝と昼の葉を比べている のが良かった。

4.おわりに
 この課題研究に取り組むにあたっては,普段の授業の中で理科的なトピックスにふれるなどの課題研究を意識した働きかけ,全グループの活動に対応した事前準備,安全面に配慮した研究指導など,大変なエネルギーが必要である。しかし,自ら課題を持ち,目的意識を持って観察・実験を行うこの活動によって,生徒は「科学的に調べる能力と態度」を身につけ,「科学的な見方や考え方」を育んでいる様子がうかがえることから,TTを有効に活用した課題研究の取り組み方など,これまでの実践をさらに発展させるようにしていきたい。

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