授業実践記録

説明し伝え合う交流活動を取り入れた授業実践
香川大学教育学部附属坂出中学校
大前 和弘

 

1.はじめに

 「説明し伝え合う交流活動」は,数学的活動の「説明し伝え合う活動」をグループやクラス全体でおこなう活動ととらえている。数学的活動については,新指導要領に次のように記述されている。

  第1学年   第2,3学年  
 
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既習の数学を基にして,数や図形の性質などを見いだす活動。
日常生活で数学を利用する活動。
数学的な表現を用いて,自分なりに説明し伝え合う活動
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既習の数学を基にして,数や図形の性質などを見いだし,発展させる活動。
日常生活や社会で数学を利用する活動。
数学的な表現を用いて,根拠を明らかにし,道筋を立てて説明し伝え合う活動
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 【説明し伝え合う交流活動】
 新学習指導要領の数学的活動ウの説明し伝え合う活動である。
 自分の考えを言葉にすることでアイデアが研ぎ澄まされる。
 他者に筋道を立てて説明するよさや必要性に気づき,理解が深まる。
 小グループ(2人~4人)だと話しやすく,考えを確認しあえる。
 多様な考えに気付くことができる。
 双方向に交流する環境に生徒をおくことで,自分の思いや考えを伝え合うための表現する能力を養うことができる。
 自分の思いや考えを伝え合うことで,考えを共有したり質的に高めることができる。

 〔具体的授業実践〕
 レポート学習を取り入れ,レポートを書くことで自分の考えにおける課題解決の「主張と根拠」を明らかにさせ,説明させる。
 4人班でレポートの発表会をひらき,自分の考え(主張)を説明させることで自分の理解を深める。
 4人班での発表後,考え(主張)のちがう生徒の代表者による発表を実施することで新しい考えが取り入れられる。
 別の課題を見つけ,説明するために他者の考えを取り入れるようになる。
 4人班での発表会の時,説明する側は,わかりやすく,聞いている側は,コメントを付箋紙に記入しながら考えのよさや違いをまとめる。
 4人班内の発表でわかったことやわからないことを質問する。
 4人班を解体して,班員以外の自分と違う考えの代表者の発表(プレゼンテーション)を聞く時間をとる。
 新しい考えを見つけた生徒に詳しく内容を聞きに行く時間を設定する。

 

2.学習指導計画(3時間計画)

 1時間目・・・レポートの書き方説明,教科書の(練習問題や問)を友人に説明できるようにレポートにまとめる。
 2時間目・・・4人班で自分の考えてきたレポートを発表し,付箋紙にコメントを書いてお互いに評価をする。上手く説明できた生徒が,全体の前で発表する。
 3時間目・・・「17段目の奇跡」

 

3.実践事例

 (1) 目 標 
 「17段目の奇跡」の中にある法則を見つけ,数量やその関係を一般的に表現したり,式から隠れた法則を読み取ろうとすることができる。
 2段目の数と17段目の数の関係を論理的に説明する方法を考え,伝えることができる。
 (2) 学習指導過程
学習内容及び学習活動 予想される生徒の変容 指導上の留意点
1.17段目の奇跡をもう一度確認する。
自分の考えを確認している。
事前にレポートを確認し,考え方の同じ生徒と違う生徒の確認をしておく。
説明する活動時に教師からのアドバイスができるようにしておく。
各自,レポートにまとめられているか確認する。
17段目がすべて7になっていることを再確認する。
手順11段目の□に自分の好きな一桁の3種類の数を入れてください。
手順22段目の□にはそれぞれ1を入れてください。
手順33段目は,1段目と2段目の数の和を求め,その一の位の数を書きます。
手順44段目は,2段目と3段目の数の和を求め,その一の位の数を書きます。
5段目も同じように続けていきます。この操作を17段目まで行います。
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  なぜ17段目が7になるのかをわかりやすく説明してみよう。
2.まとめてきたレポートを班で発表する。
 
1人3分で説明させる。
いろいろな数をあてはめて考えてみる。
いろいろな数で調べてみると説明できる場合を考えている。
相互評価のためのコメント紙(付箋紙)を配布する。
2段目に1以外を入れるとどうなるのか。
2段目に1を入れることに疑問を持っている。
2分でコメント紙に説明のよかったこと,新しくわかったことなどを記入させる。
文字を使って考えてみるとどうなるのか考えてみる。
文字を使うとすべての数についてうまく説明できることを考えている。
机間指導でよい発表を確認しておく。
3.他の人からのアドバイスを聞いて自分の考えを深める。
17段目以外に何かの規則のある段は無いのか探す。
友だちのアドバイスを読み,自分の考えを深めている。
他に何か規則性は無いのか考えている。
写真1
友人のアドバイスをどのようにいかすのか考えを深めさせる。
   
7段目,12段目に表れる規則性に気づくように助言する。
4.まとめや感想を書いて自己評価をする。
文字式の有用性を実感している。
文字式の有用性を自分の言葉で自己評価させる。
文字式の役割について。
説明することの大切さ。
写真2
わかりやすく説明することは数学以外でも大切だと知る。
論理的に説明することの大切さに気づかせる。

 

4.授業後のレポートと感想

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 生徒の感想
 17段目がなぜすべて7になるのかは1段目を x として文字を使って考えると分かりやすかった。7段目以降続けていくと32段目にはすべて9になることも分かった。
 今日の授業で17段目にできる奇跡以外に7段目,12段目の規則も説明することができた。
 最初は奇跡だと思っていたけど,ちゃんと筋道を立てて考え,文字を使うと説明できるんだなあと思いました。
 いろんな意見を聞くことができ,自分の意見とは違っているところを比べてみたり,自分の考えに取り入れたりしてとても楽しかった。
 1段目を x ,2段目を y として考えて説明するとわかりやすくなった。数学の世界はすごかった。
 難しかったけどいろいろなきまりがたくさん見つかっておもしろかった。

 

5.成果と課題

 生徒が「なぜ?」と興味をひくことのできる教材であったため,数学が得意不得意の生徒にかかわらず熱心に取り組むことができた。
 いろいろな考え方ができ,17段目以外にも7段目や12段目でも法則を見つけることができたので説明し伝え合う活動がスムーズに進んだ。
 数学を苦手としている生徒は,すべての数について調べるなど自分の取り組みを説明し,友人の説明から文字の有用性にも気づくことができた。
 「17段目以降はどうなるのだろう?」と新しい課題を見つけ取り組もうとする生徒も見られた。
 レポートを宿題としたため,レポートの内容に差が出てしまった。
 文字を使って表すことがわかってもその後にまで考えが及ばない生徒も多く,位取りの仕方が事前に必要であった。
 4人班での説明会の時,司会などを決めておけばもっとスムーズに話し合いも進むように思った。
 付箋紙にコメントを書き,お互いに評価をしたが,時間が少なく,「よかった」「わかりにくかった」など表面的な評価になってしまった。
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