広島県広島市立古田中学校
荒谷 涼
岩石の学習は中学校理科の中で扱われる内容の中で最も生徒の興味・関心が低いものの一つであると考えられる。そこには,岩石の学習が単なる暗記科目,岩石の名前やその特徴を覚えるだけの学習になりがちであるという問題点があげられる。また,授業の中で岩石標本や岩石プレパラートの観察といった実物観察の不足。たとえ,実物観察が十分に行われたとしても,生徒にとって理科室の棚の中に眠っている石ころであれば,岩石標本が野外の産状と結びつかず,岩石が身近なものとして感じられないものとなる。
そこで,教師自らが中国地方の分布する火成岩の路頭の産状をビデオに記録し,標本を採取したのち,その標本から岩石プレパラートを作ることによって,路頭の様子,岩石標本,岩石プレパラート関連づけた教材を作成し,実践を行った。
図1 岩石標本採取場所
次の6カ所で路頭のビデオ撮影・岩石標本の採取・プレパラートの作成を行った。
図2 路頭・岩石標本・顕微鏡での様子
生きている地球
第1章 大地が火をふく
第2項 マグマからできた岩石を調べてみよう
はじめに,グランドの砂から鉱物を採取し鉱物の学習を行った。グランドの砂は生徒にとってもっとも身近なもので,グランドでの整列の際砂をいじったり,小石を投げて怒られたりという経験は誰しもあるものである。その砂こそが広島県南部に広く分布する花崗岩のなれの果てである。そこで,あらためて砂粒に目を向けさせ,風化の過程を実験により再現することで,花崗岩を作る造岩鉱物と同じ鉱物であることを気づかせ岩石の学習につなげるとともに,理科で習う岩石を生徒の身近なものとして捉えさせた。
つぎに,火山岩と深成岩の代表として花崗岩と安山岩の観察を行った。路頭のビデオを見せた後,その路頭の岩石標本とプレパラートを観察することで,野外での産状と岩石の肉眼・顕微鏡での様子を一つのものとしてとらえることができるようになる。岩石プレパラートは教材会社で安価に売られている偏光シートを小さくカットし,2枚のシートではさみ,顕微鏡の低倍率で観察した。この方法により,火山岩と深成岩の組織の違いが一目瞭然となる。また,啓林館教科書2分野上P59図5の実験を行い,マグマの冷え方と組織の違いを考察させた。
最後に,6種類の岩石標本とプレパラートを用意し,含まれる鉱物の割合を示した表をもとに岩石の名前をつける活動を行った。生徒はまず,プレパラート観察による組織の違いから火山岩と深成岩に分け,そこから,有色鉱物と無色鉱物の割合と岩石の色により岩石を判断していくことになる。従って,火成岩の組織ついて知識を活用した実践的な活動になるとともに,岩石が鉱物の種類や量によって変化していることを捉えることができる。
時 | 内容 | 展開 |
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1 | 鉱物について |
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2 | 岩石の風化と鉱物 |
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3 | 火成岩の観察 |
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4 | マグマの冷え方と組織 |
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5 | 火成岩の分類 |
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図3 生徒のスケッチ
グランドの砂の鉱物の観察では,より多くの種類の鉱物を,より大きい鉱物を,というように熱心に採取しており,まるで宝探しをするかのような生徒の姿は印象的だった。また,岩石のなかの鉱物から砂の鉱物への風化の過程を実験でつなげることができたことで,岩石の学習への興味付けと岩石が身近なものであるという意識を持たせることができた。
火成岩の観察では,岩石プレパラートを偏光シートで観察したときには驚きの声がでていた。岩石標本と岩石プレパラートを同じ路頭の岩石であったため,普段おもしろみのない岩石標本を見る目が変わった。また,生徒のスケッチには斑状組織と等粒状組織の違いがしっかり表現されており,岩石の分類で火山岩と深成岩を区別することができたことからも,火成岩の組織の特徴をしっかりと理解させることができた。ただし,偏光シートでの色は,本来の岩石の色ではないため,その点は留意する必要があった。
火成岩の分類では,鉱物組成の表をもとに6種類の岩石に名前をつけることができており,岩石の色と含まれる鉱物の種類や量を関連づけて捉えさせることができた。
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