天体の学習内容は,生徒の興味・関心が高い単元である。しかし実験や観測がしづらく,実感をさせながら授業をするのは難しい。理科の単元としては非常に魅力的であるのに,実感できないために難しくとらえてしまい,ただ暗記するだけの単元だと感じている生徒も少なくはないのが非常に残念である。この単元の魅力をもっと理解してもらうため,指導にあたっては,明石市立天文科学館の学芸員の方と連携して,移動式プラネタリウムを授業で使うことにより,生徒の興味・関心を高め,積極的な発言を引き出し,また,きめ細かい指導が必要な生徒の個別指導もしながら,この単元の本来の魅力を実感をもって生徒に理解させようと考えた。
移動式プラネタリウムを使用できたのが,授業本番の日のみで練習はできなかったが,学芸員の方のフォローもあり,プラネタリウムの操作については不具合はなかった。 当時勤務していた学校は,生徒数も少なく,時間割調整も柔軟にできたため,一日で3年生すべての学級でこの授業を行えた。
学習活動 | 指導上の留意点 | 評価活動・観点 | |
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導入 10分 |
1.本時のねらいの説明 天文科学館学芸員紹介 |
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【関心・意欲・態度】
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2.移動式プラネタリウムを使っての星空観察 ①プラネタリウム内の北極星の位置を確認し,東西南北を理解する。 |
【技能・表現】
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質①「北の方角はどこになるでしょう。体を向けてみよう。」 ヒント |
質① 星がたくさんあるので,北極星が北の方角を示すとわかっていても北極星を探せない生徒がたくさんいると考えられる。
方角が確認できたら,東西南北がわかるカードを貼る。 |
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質②「自分が知っている星座の名前を言ってみましょう」 |
質②オリオン座の名前が出てくることが予想される。 |
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展開 40分 |
②12月3日の19時から25時までのオリオン座の動きを3時間ごとに観察する。 質③「オリオン座はどの方角からどの方角に動いていきましたか。」 |
この観察のときに,星の位置は変わるが,星の並びは変わらないということを確認させる。 質③「東から南」 |
【技能・表現】
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③東,南,西,北それぞれの方角の星の動き方を,時間を早めて観察する。 質④「東の空では星はどのように動きましたか」 南,西,北それぞれについて同様に確認する。 |
観察しやすくするために,それぞれの方角に生徒の体を向けさせる。 質④「南に向かうように動いて見える。」 など。 |
【技能・表現】
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④東西南北すべての方角の星たちが一斉にどのように動いていくかを満天の星空で観察する。 質⑤「全天では星がどのように動いて見えましたか。」 |
星の日周運動が地球の自転と関連していることをつかませるために,全天の動きをしばらく時間をとって確認させる。 質⑤「北極星を中心にしてまわっているように見えた。」など。 |
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質⑥「なぜそのように見えるのか。」 地球儀を用いて,宇宙から見た地球として視点を変え,地球の自転と星の動きについて考えさせる。 |
質⑥「地球が自転しているから。」など。 学芸員の方が地球儀を用いて専門的な視点で説明を加えることで,より理解を深める。 |
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⑤北極,赤道付近,南極での星が動く様子を観察し,その土地の緯度によって見え方が変わることを確認する。 |
地球儀を用いて説明しながら,それぞれの地域での星の動き方を予想させてから,実際の星の動きを確認させる。 |
【科学的な思考】
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授業を受けての生徒の感想は,「教科書の写真だけではわからなかったことが,プラネタリウムで実際に見ることによって,すごくわかりやすくて楽しかった。」「明石の夜空を見たあとの満天の星空には感動した。」「普段は夜空なんて見上げたりしないのですが,あの授業を受けた後に夜空を見上げるようになった。」「天文科学館のプラネタリウムより,移動式の方がわかりやすかった。実感がもてた。」など,ねらい通りの感想が多く見られた。
授業者としては,事前にプラネタリウムを使っての模擬授業が行えないのは不安であったが,学芸員の方と連携することで,スムーズに授業展開ができた。また,教師だけでなく,日頃からプラネタリウムを使っている学芸員の方からの専門的な説明はさすがで,語り方,よりわかりやすい説明により,実感がもてる授業が行えた。