かんむり座は観察する場所や空での位置により全く違う形に見えます。日本から見るとuの形に見えますが、南のインドネシアのバリ島からはnの形に見えビンタン・パンチと呼ばれています。この形を「さかさまの鍋」に見立てた話が伝承されています。
ある朝、ナナン・パルッグという男が田んぼに行く途中で巨大なウナギを見つけました。男はウナギを家に持って帰り、昼食に帰るまでに美味しいスープにして煮込んでおくようにと妻のメメン・パルッグに言いつけます。
メメンは巨大なウナギを見るとびっくりし、ウナギが入る鍋がないかと探し回りますが昼になっても見つかりません。料理ができていないことを夫に叱られるのではないかと案じたメメンは、黄色い香辛料を体にたくさんぬって急病になったふりをすることにしました。
帰ってきて妻がひどい病気になったと心配したナナンは自分でウナギを料理することにしました。ウナギを小さく切り刻めば切ったウナギは自宅にある鍋にちゃんと収まり、美味しいスープができました。
スープが出来上がると優しい息子がご飯を少しとスープを少し運んできます。メメンは何度もお代わりをし、それでもまだ足りず、夫と息子が出ていくのを見計らって台所に忍び込み、スープを全部飲み干してしまいます。
それでもまだ満足できなかったメメンは鍋に頭を突っ込んで鍋底のスープを舐め始めめした。一滴残らずスープを舐めつくしてメメンは満足しましたが、今度は自分の頭が鍋から抜けないことに気が付きます。
メメンは助けを呼びました。ナナンは大急ぎで家に駆け戻るとメメンの頭から鍋を抜き取りました。
ナナンは鍋が妻に噛みついたと思い、金づちで鍋をぼこぼこに叩いているその時、息子が帰ってきます。賢い息子は鍋が噛みつくはずがないと父親をさとしました。
ナナンは自分の間違いを詫びるため、ひしゃげた鍋を祭壇にまつり、たくさんのお供え物を捧げて鍋の精に許しを乞いました。すると突然鍋は空に昇って明るく輝き始めます。
そして鍛冶屋の守護神ラトゥ・パンデ・スナンタラが家族の目の前に現れました。鍛冶屋の守護神は愚かな行いを改めるようナナンとメメンを戒め、聡明な息子の行いを讃えて立派な鍛冶屋になれるように職人に育てたと言われています。
インドネシアはその文化の中で物を大切にする風習があります。そのため、鍋一つをとってしても鍋に神が宿っていると信じ、それを信仰しているそうです。
ビンタン・パンチの伝承にもその行いが表れていて、鍋は間違ったやり方で物事を収めようとした人々への戒めとして星になったといわれています。
伝承地域
インドネシア
現地語の表現
調査中
伝承時期
不明
およその位置
赤経… 15h 16m 03.8205s ~ 16h 25m 07.1526s
赤緯… +39.7117195° ~ +25.5380573°
(wikipedia かんむり座)
信頼度
構成する星が特定されている