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算数

6年 多面的・批判的に考察する「データの活用」授業展開

高槻市立北日吉台小学校 朝田 博之

1.はじめに

現行学習指導要領から,「データの活用」という領域が設定されている。この領域のねらいとして,学習指導要領解説算数編には,次のように整理されている。

  • 身の回りの事象をデータから捉え,問題解決に生かす力,データを多面的に把握し,事象を批判的に考察する力の育成を目指す
  • 統計的な主張はニュースや新聞,雑誌など社会においてもよく触れる機会があるが,調査対象が偏っていたり,本来の特徴や傾向とは異なる印象を相手にもたせるように作られたグラフが用いられたりする場合もあるため,注意深く読み取り,その妥当性について批判的に考察することも大切である。
  • 「Dデータの活用」では,身の回りの事象から設定した問題について,目的に応じてデータを収集し,データの特徴や傾向に着目して適切な手法を選択して分析を行い,それらを用いて問題解決したり,解決の過程や結果を批判的に考察したりする力を養う。これまでの学習で学んだ統計の問題解決過程を生かして,身の回りの事象から目的に応じたデータの収集,表や柱状グラフなどの選択と表現,それを用いた問題解決及び解決過程や結果の批判的な考察を重視する。統計の問題解決の過程を重視しながら,データの特徴や傾向に着目し,目的に応じて代表値などを活用して結論の判断をすることを重視する。

例えば,右の図はOECDによる生徒の学習到達度調査(PISA)で用いられた問題例であるが,「あるテレビレポーターがこのグラフを示して,『1999 年は1998 年に比べて,盗難事件が激増しています。』と言いました。このレポーターの発言は,このグラフの説明として適切ですか。」と出題されたものである(国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能2』ぎょうせい 2004年 p.119)。このようなデータに基づく主張を提示された際に,それを鵜呑みにすることなく,信頼できるデータに基づく妥当な判断に基づくものであるかどうかを批判的に考察することが重要である。

平成30年度の全国学力学習状況調査において,A問題・B問題の両方で統計処理に関する問題が出題された。A問題9では折れ線グラフの読み取り問題,B問題3では,複数の観点で処理されたグラフの考察に関わる問題である(次項参照)。

このB問題3の設問(1)が,最も正答率が低かった問題である(大阪府平均は18.8%)。このことから,複数の情報を処理し,数学的な見方・考え方を働かせて考察する力が課題であるといえる。

そこで,資料を多面的・批判的に考察する「データの活用」領域の授業実践を一部紹介する。

2.実践①「5人の主張の根拠を見つけよう」

資料・問題の提示
計算テストの結果を見て,5人が「自分が1番だ!」と言っています。5人は,それぞれ記録のどこを見て,自分が1番だと言っているのでしょう。(少しずつ記録を見せていく。)

  • 朝田さんは,1回目はいいのにな。
  • 木村さんは,1回分少ないね。
  • 渡部さんは,5回目がもったいないなあ。
  • 中村さんは,安定しているね。
  • どうやって比べたらいいのかな。
  • 平均値を求めたらいいのかな。

データを考察する

  • 全部を合計した数は,朝田さんが1番だった。
  • 平均値が高いのは,木村さんだったよ。
  • 最大値を見ると,吉丸さんの99が1番だ。
  • 最小値の記録が最も良いのは,中村さんだね。
  • 中央値を調べてみたら,渡部さんが1番だよ。
  • それぞれ1番だと言える根拠があるね。

解決・ふりかえり

  • 見方を変えると結論が変わることもあるんだね。
  • 代表値が何かを意識して読み取る必要があるね。

3.実践②「データを正しく読み取っているのは誰?」

導入

  • 何のグラフなんだろう。
  • 好きな食べ物のグラフか。1位はお寿司かな。

資料・問題の提示

  • えっこのグラフ,本当…?
  • 卵焼きが1位なのは意外だな。
  • あれ?それは間違っているよ。だって・・・
    (資料は,児童のタブレットPCに送っているので,拡大表示が可能。)

グラフ,データを考察する

  • 波線がある。つまり,省略されている。
  • ということは,きっと見た目ほど差はないだろう。
  • 縦軸の単位が%だから,人数ではないんだね。
  • コロッケとお寿司の違いは,よく見ると1%もないぞ。
  • グラフの下に,※で,小さく1960年と書いている。だから,最近の小学生のデータではないな。

解決・ふりかえり

  • 省略しているから,ずばぬけて1番は言い過ぎだ。
  • 見た目は3倍だけど,縦軸の数値は3倍じゃない。
  • 縦軸は%だから,12人はおかしい。
  • かなこさんが言っていることは,正しいのかどうかわからないな。今の小学生のデータはないのかな。
  • 4つの項目の数値を合計しても,100%にならないよ。おかしいな。
  • もしかして,ランキングは4つだけじゃないのかな。データの一部を切り取っているんじゃ…?
  • 4人とも正しいことを言っているように感じたけれど,実際は違ったのだね。

4.実践③「グラフのウソを見抜こう」

(geminiで作成した,誤解を招くグラフの例)

日常生活で目にする統計グラフの中には,意図的にデータを歪曲・強調し,事実とは異なる印象を読み手に与えるような,誤解を招くグラフが存在する。著作権の関係で資料の掲載は割愛するが,授業では,実際に世の中にある10個のグラフを批判的に考察し,グラフの中にある"ウソ"を見抜く学習を行った。

5.実践④「データを使って主張しよう(お互いに評価しあおう)」

ここまでに様々な角度からデータを多面的・批判的に読み解くことを学習してきた児童だが,あくまでも問題提示は教師側からであった。そこで,実践④では,実際に収集したデータを用いて,自分の主張に合う代表値・グラフを選択してプレゼンテーションを行った。具体的には,まず児童は,自分の主張に必要なデータをクラスから集めた。そして,実践①のように自分の主張に合う代表値を選んで,グラフにして説明した。しかし,アンケートで集めたデータは,当然主張に合わない結果になることもある。その際,児童は実践②や③で学んだ方法を使って,データの一部だけを使ったりグラフの見せ方を工夫したりすることで,主張を裏付けるようにデータを活用した。活動の中で,PPDACサイクルを児童は何度も回した。プレゼンを聞いた児童は,タブレットPCに配られた資料とにらめっこしながら,「どこかおかしなところはないかな…?」「他の見方はないかな?」と,多面的・批判的に考察し,互いのプレゼンを評価しあった。

プレゼンテーションの様子

資料を批判的に考察する姿

6.終わりに

現代社会は,インターネットやメディアを通じて膨大なデータや情報が日々提供されている。これらの情報には,事実に基づかないもの,意図的に偏らせたもの,誤解を招く表現が含まれていることがある。

そのため,一つのデータやグラフだけを見て安易に結論を出すのではなく,異なる視点から多角的にデータを分析することで,より本質を捉えた理解が可能になるだろう。

また,提示されたデータが信頼できる情報源からのものか,どのように集計されたか,グラフの目盛りや軸が意図的に操作されていないかなどを吟味する力も必要である。「データの活用」領域の学習を通して,結論の妥当性について多面的・批判的に考察し,これからの実生活でも誤った情報に惑わされず,正確な判断を下す基礎を養っていきたい。総合的な学習の時間等との教科横断的な視点も,有効だろう。

【引用・参考文献】