現行学習指導要領から,「データの活用」という領域が設定されている。この領域のねらいとして,学習指導要領解説算数編には,次のように整理されている。
例えば,右の図はOECDによる生徒の学習到達度調査(PISA)で用いられた問題例であるが,「あるテレビレポーターがこのグラフを示して,『1999 年は1998 年に比べて,盗難事件が激増しています。』と言いました。このレポーターの発言は,このグラフの説明として適切ですか。」と出題されたものである(国立教育政策研究所編『生きるための知識と技能2』ぎょうせい 2004年 p.119)。このようなデータに基づく主張を提示された際に,それを鵜呑みにすることなく,信頼できるデータに基づく妥当な判断に基づくものであるかどうかを批判的に考察することが重要である。
平成30年度の全国学力学習状況調査において,A問題・B問題の両方で統計処理に関する問題が出題された。A問題9では折れ線グラフの読み取り問題,B問題3では,複数の観点で処理されたグラフの考察に関わる問題である(次項参照)。
このB問題3の設問(1)が,最も正答率が低かった問題である(大阪府平均は18.8%)。このことから,複数の情報を処理し,数学的な見方・考え方を働かせて考察する力が課題であるといえる。
そこで,資料を多面的・批判的に考察する「データの活用」領域の授業実践を一部紹介する。
資料・問題の提示
計算テストの結果を見て,5人が「自分が1番だ!」と言っています。5人は,それぞれ記録のどこを見て,自分が1番だと言っているのでしょう。(少しずつ記録を見せていく。)
データを考察する
解決・ふりかえり
導入
資料・問題の提示
グラフ,データを考察する
解決・ふりかえり
(geminiで作成した,誤解を招くグラフの例)
日常生活で目にする統計グラフの中には,意図的にデータを歪曲・強調し,事実とは異なる印象を読み手に与えるような,誤解を招くグラフが存在する。著作権の関係で資料の掲載は割愛するが,授業では,実際に世の中にある10個のグラフを批判的に考察し,グラフの中にある"ウソ"を見抜く学習を行った。
ここまでに様々な角度からデータを多面的・批判的に読み解くことを学習してきた児童だが,あくまでも問題提示は教師側からであった。そこで,実践④では,実際に収集したデータを用いて,自分の主張に合う代表値・グラフを選択してプレゼンテーションを行った。具体的には,まず児童は,自分の主張に必要なデータをクラスから集めた。そして,実践①のように自分の主張に合う代表値を選んで,グラフにして説明した。しかし,アンケートで集めたデータは,当然主張に合わない結果になることもある。その際,児童は実践②や③で学んだ方法を使って,データの一部だけを使ったりグラフの見せ方を工夫したりすることで,主張を裏付けるようにデータを活用した。活動の中で,PPDACサイクルを児童は何度も回した。プレゼンを聞いた児童は,タブレットPCに配られた資料とにらめっこしながら,「どこかおかしなところはないかな…?」「他の見方はないかな?」と,多面的・批判的に考察し,互いのプレゼンを評価しあった。
プレゼンテーションの様子
資料を批判的に考察する姿
現代社会は,インターネットやメディアを通じて膨大なデータや情報が日々提供されている。これらの情報には,事実に基づかないもの,意図的に偏らせたもの,誤解を招く表現が含まれていることがある。
そのため,一つのデータやグラフだけを見て安易に結論を出すのではなく,異なる視点から多角的にデータを分析することで,より本質を捉えた理解が可能になるだろう。
また,提示されたデータが信頼できる情報源からのものか,どのように集計されたか,グラフの目盛りや軸が意図的に操作されていないかなどを吟味する力も必要である。「データの活用」領域の学習を通して,結論の妥当性について多面的・批判的に考察し,これからの実生活でも誤った情報に惑わされず,正確な判断を下す基礎を養っていきたい。総合的な学習の時間等との教科横断的な視点も,有効だろう。