第2学年で分数について初めて学習する。簡単な分数について知ることに加え,「1/2,1/3,1/4などの大きさをつくる具体的な活動を通して,乗法及び除法の見方の素地となるよう指導する」(文部科学省,2017,p.107)と述べられている。
そこで,乗法及び除法の見方の素地となる分数の授業実践について紹介していく。
(1)単元のねらいについて
本単元のねらいは,次の3つと捉えた。
元の大きさを意識することは,本単元だけでなく,3年生以降の分数や割合にもつながることである。本単元でいえば,元の大きさが変われば,同じ1/2でも大きさが変わる事例などを通して,1/2という表現だけでなく,何の1/2なのかを意識できるようにしたい。
乗法及び除法の見方は,本単元でいえば分ける前の元の大きさから1つ分を捉えるか,分けた1つ分から分ける前の元の大きさを捉えるかの違いである。例えば,「12個の1/2は,6個」という全体から部分への見方ができる。また,「6個の2倍は,12個」という部分から全体への見方もできる。前者は除法の見方,後者は乗法の見方と捉えられるだろう。(図1参照)
図1 乗法及び除法の見方の具体例
(2)予想される児童のつまずき
本単元では,操作活動から導入されることが多い。例えば,折り紙が用いられる。折り紙を用いることで,具体的な操作によって1/2や1/4を作りやすいという利点がある。しかし,思わぬつまずきにつながる場合がある。
折り紙を用いて同じ大きさに分けられたかを確かめる際は,重ねるという方法が取られる。1年生での広さの学習を生かしている素晴らしい姿である一方で,重なるということは同じ形に限られてしまう。すると,例えば下の図のように同じ形ではない場合や重ならない場合は,1/2ではないと判断してしまう児童の姿が生まれてしまう。(図2参照)
図2 予想される児童のつまずきと理想の姿
これでは,乗法及び除法の見方の素地を養えているとは言えないだろう。同じ形ではない場合でも同じ大きさに分けられていることを根拠に語れる子の姿を目指していきたい。
(3)本単元の手立て
本単元では,3つの手立てを講じた。
【手立て1】導入で提示する材料
導入ではピザの1/3に当たる大きさを提示する。児童たちが言葉に表しにくいものだからこそ,分数で表せることの良さを味わえると考えた。また,一部分だけ見せることにより,その何倍が1枚に当たるかという乗法の見方や何等分されているかという除法の見方につながりやすいと考えた。
【手立て2】多様なものを半分にする活動
正方形の折り紙だけでなく,円の折り紙や12個のチョコレートも半分にする活動を行う。このことにより,重ならない場合でも同じ大きさだと判断し,その上で分数を導入したいという思いがあった。
【手立て3】時計の目盛りをもとに分数を考える活動
時計は円の形をしており,その目盛りは長針で捉えれば60等分,短針で捉えれば12等分されている。そのため,円折り紙で折って作れない分数でも,時計であれば目盛りを使うことにより,分数で表現できるものが増える。例えば,1/3を考える際,60分は20分,20分,20分に分けられるという除法の見方もあれば,20分が3つ分で60分という乗法の見方もできる。同じように,12時間で捉えれば,1/3は,12時間が4時間,4時間,4時間に分けられることを手掛かりに解決できるだろう。時計の目盛りを用いることで,1/3だけでなく様々な分数が作れる。多様な場面に対して,乗法及び除法の見方を働かせながら分数を作ることができるため,本単元では時計の目盛りをもとに分数を作る活動を取り入れた。
本章では上述した本単元の手立てとそのときの学びの様子に絞って紹介をする。
(1)第1時:手立て1,2に関わって
写真1 第1時の板書
本時の導入では,板書にあるようなピザ1枚から提示した。この量を「1」とするときにどう言えるかを問いかけた後,ピザ2枚分,3枚分と続けて提示した。児童たちは,「2」「3」と自信をもって答えていた。その後,1/3枚のピザを提示した【手立て1】のときに,「5等分されている!」「1切れ」「何も言えない」などとつぶやく児童もいれば,戸惑っている児童もいた。このとき,どうして何も言えなかったり,みんなの言葉が揃わなかったりしたのかを尋ねてみたことで,「欠けている」「1枚分ない」と既習との違いが顕在化した。
その後,ぴったり同じ大きさに分けるという前提をみんなで共有してから,円の折り紙と正方形の折り紙を提示した。2人分(2つ)だったらみんなが自信をもって分けられるという声が多かったため,今回は2つに分ける活動を中心とした。
折り紙の場合はぴったり重なるように折っていれば,同じ大きさになっているということを確認した。その後,12個のチョコレートを提示し,同じ大きさの2つに分ける活動を行なった。【手立て2】12個を2つに分ける活動の際は,折って2つに分ける児童もいれば,数に着目しながら2つに分けている児童の姿も見られた。全体で共有するとき,どうして同じ大きさに分けていると言えるのかと投げかけると,「どちらも6個ずつ!」「6×2=12」と乗法の見方で同じ大きさだと語る姿が見られた。また,下のように同じ形ではない1/2の考えも最後に取り上げた。児童たちはペアで同じ大きさかを相談した後,「形は違うけど数が同じだから同じ大きさ」と判断していた。(写真2参照)
写真2 同じ形ではない1/2の考え
(2)第4時:手立て3に関わって
4時間目は,1時間目の導入で扱った1/3の大きさのピザから学習を始めた。4時間目になると,何人かの児童が「1/3」と予想を言ったり,確かめるために3切れあれば確かめられる旨の発言をしたりしていた。何切れで1枚になりそうなのかを問いかけると,多くの児童が3枚必要とつぶやいていた。そこで,4人班になり,1人1切れずつのピザの絵を配付した。すると,途中で「元々のピザも欲しい!」という声が聞こえたため,分ける前の1枚のピザの絵も配付した。児童たちは最初もらった一切れを班で出し合って,1枚のピザの上に3切れ乗せ,「めっちゃピッタリになる!」と3切れで1枚分になることを確かめていた。(写真3参照)
その後,1切れが3倍になると1枚になることを確認した上で,1切れは分数でいうと1/3になることを共有した。このとき,児童たちは1切れと1枚分,部分と全体を行き来して,乗法の見方や除法の見方で捉えていたと考えている。
写真3 1/3のピザを合体する様子
一人の子が1/3は作れるかな?とつぶやいていたことから,時計を使って分数を作ることを提案した。【手立て3】するとすぐに「20分ずつすれば60分になる」と気付き,つぶやいている児童の様子が見られた。何分の1が作れそうかをみんなに問いかけ,1/3,1/4,1/2,1/12などが提示された。最初はどの分数をみんなで作っていきたいかを投げかけ,全員が1/12から取り組むことにした。
その後,目盛りが根拠にできそうな分数に絞るために1/8,1/1は除いた上で,自分が選んだ分数を作る活動を行った。1/4や1/3を作ることを選んだ児童たちは,うまく分数が作れたが,多くの児童が挑戦した1/5は難しかったようで,本時では解決しなかった。1/5を作るために10分ずつ区切ったが,結果的に1/6になったことを振り返っている児童もいた。
授業の終わりに1/3を作った子の考えを紹介し,振り返りを書いて4時間目を終えた。
写真4 第4時の板書
【手立て1】導入で提示する材は,1/3から導入することにより,全体が何等分されているかという見方(除法の見方)と何切れで1枚分になるかという見方(乗法の見方)を引き出すきっかけとなり得た。
【手立て2】多様なものを半分にする活動を通して,重なるだけでなく,乗法及び除法の見方を根拠に同じ大きさと判断する素地につながった。
【手立て3】時計の目盛りをもとに分数を考える活動は,メリットとデメリットがある。メリットは,多様な分数が作れることに加え,同じ分数でも分け方が異なる場合が出てくることである。写真5のように友達と分け方が異なることで,「同じ1/3なのか」「それはなぜなのか」を考えるきっかけが生まれる。どちらも20分ずつ分けられていることや20分ずつが3つ分あることを根拠に判断していく姿が想定されるため,乗法の見方につながりやすいのがメリットの1つである。
写真5 児童が考えた時計の1/3
デメリットは,九九の範囲を越える乗法や除法が必要になることである。元の大きさを12時間ではなく60分と捉える子が多かった。そのため,1/5や1/6などを考える際には何分ずつ区切ればよいか悩み,解決できない子の姿も見られた。元の大きさを12時間と捉えれば九九を使って解決できる分数もあると考えていたが,子どもたちにとっては元の大きさを60分と捉える方が自然だったのだろう。
本実践は,現行の一般的な指導と比較し,導入から乗法及び除法の見方につながる材を扱ったため,自然と児童たちがかけ算を使って表現する場面が見られた。このことから,単元を通して,乗法及び除法の見方の素地となり得たと考えている。一方で,どうして1/3と言えるのか,なぜ同じ大きさに分けたと言えるのかといった部分について,より個人で思考し,ノートに表現する時間を確保したかった思いもある。折ったり,線を引いて分けたりする活動を大事にする一方で,その活動を振り返り言語化する活動とのバランスを今一度考えていきたい。今後も,児童が考えたい,やってみたいという思いになり,深い学びにつながる指導について考え,実践を積み重ねていく。