現代は,「VUCA」と呼ばれる時代であり,私たちが直面している現代社会の特徴を表している。このような社会の中で,自分の人生を切り拓いていくためには,課題を自分ごととして考え,目標を設定すること,解決に必要な行動をとろうとする態度,目標設定から解決するまで一連の行動の中で,どんな効果を生み出したのかを考えたり,振り返ったりする能力を高めていくこと,いわば「自己調整力」が一層求められていると考えた。
「自己調整力」とは,児童が自らの学習状況を見直し,目標を達成するために,何をすればよいか考えたり,諦めずに粘り強く取り組んだりできる力のことである。自分の目標に合った学び方を自己選択したり,自己決定したりすることを通して,自分の学びをよりよい方向へ変えていこうとするものである。
「数学的な見方・考え方を働かせるGCRサイクル」とは,GCRのそれぞれの活動に,数学的な見方・考え方を働かせるための視点を明確にすることである。(福岡教育大学 生田 淳一教授にご示唆いただいた「鍛ほめGCRサイクルの確立」を活用)例えば,「目標設定の活動」Goal(G)では,事象を数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉えられるように2~3段階で具体化した活動目標を設定すること,「挑む活動」Challenge(C)では,理解したことを確実に自分のものにするために,一人ひとりが根拠を基に筋道を立てて考え,アウトプットできる時間を設定すること,「振り返る活動」Reflection(R)では,自己の学習活動を俯瞰し,統合的・発展的に振り返る時間を設定することである。(右図)
(1)単元について
本単元は,領域B 図形「B(3)平面図形の面積」についての学習である。第5学年では,第4学年における長方形や正方形の面積の学習を踏まえ,直線で囲まれた基本的な図形の面積について,必要な部分の長さを測り,既習の長方形や正方形などの面積の求め方に帰着させ計算によって求めたり,新しい公式をつくり出し,それを用いて求めたりすることができるようにすることを主なねらいとしている。そこで,既習の考えや経験を基に面積の求め方を考えたり,公式をつくったりする過程を重視することが大切である。主眼に迫るための自力解決の目標を明確にできるような場や表現活動の場面において,自分の考えを付加,修正するような場を効果的に設定することで,本単元のねらいに迫ることができる。
三角形,平行四辺形,台形,ひし形の順に等積変形,倍積変形,分割による見方・考え方を働かせ,面積計算による求め方を繰り返し考えることで,基本図形の面積の求め方を見いだすだけでなく,その表現を振り返り,簡潔かつ的確な表現に高め,公式をつくりだしていく資質・能力の育成を目指すことが大切である。
(2)本時の内容(授業場面:台形の面積の求め方を考えることができる。)
①予習(デジタル教科書を活用した動画の視聴)
②「目標設定の活動」Goal(G)
めあて(図形と式とをつなげて考え,台形の面積の求め方を説明しよう。)の達成に対する自力解決のゴールを子どもの実態に応じて設定することができるように,具体的なゴールについて話合う時間を確保し,見通しをもつ活動を設定した。
③「挑む活動」Challenge(C)
○自己選択した自力解決のゴールに向けて取り組む場面
○ 考えを共有する場面(アウトプットする場面)
④「振り返る活動」Reflection(R)
○ Googleスプレッドシートの活用
「目標設定の活動」Goal(G),「挑む活動」Challenge(C),「振り返る活動」Reflection(R)において,数学的な見方・考え方を働かせるための視点を明確にしたことにより,求積の方法を見いだし,図形に対する豊かな感覚を育てるとともに,既習の図形に帰着させて筋道立てて説明することができる力を身に付けさせることができた。また,既習の求積可能な図形の面積の求め方に帰着して考えるよさを実感するとともに,自分の考えを付加・修正しようとしたり,自分と違う意見について考えることを楽しいと感じたりできるようなり,求積の過程を筋道立てて表現する力にも繋がっていた。
今後も各領域で,「目標設定の活動」Goal(G),「挑む活動」Challenge(C),「振り返る活動」Reflection(R)のそれぞれの場面に,数学的な見方・考え方を働かせるための視点をどう明確にしていくかが求められると考える。