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英語

小学校の特別支援学級の自立活動の時間における外国語活動
~個別最適化をめざして~

和泉市立幸小学校 川﨑 育臣

1.はじめに

特別支援学級は,小学校,中学校等で,知的障害,肢体不自由,病弱及び身体虚弱,弱視,難聴,言語障害,自閉症・情緒障害の児童生徒に対して障害による学習上又は生活上の困難を克服するために設置されている学級である。勤務する小学校の特別支援学級では,自立活動の時間に外国語活動,体育,工作,野菜の栽培や収穫した野菜の販売活動等を行っている。この時間は,特別支援学級合同で行うので,他の特別支援学級の担任,介助員等も児童と関わることができ,チーム学校で対応することができる。特別支援学級の児童は,通常の学級で外国語活動や英語科の授業に参加しているので,特別支援学級で学んだことを少しでも通常の学級で活かして自信を持って参加できることを目指している。

2.自立活動

自立活動の指導は,個々の児童生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服しようとする取り組みを促す教育活動である。自立活動の6区分27項目で個別に指導目標や具体的な指導内容を定めた個別の指導計画が作成されることが必要である。『健康の保持』では,生命を維持し,日常生活を行うために必要な身体の健康状態の維持・改善を図る。健康状態の良い時には,様々な活動を行うことができるが,健康状態が良くない時には無理をさせないようにする。『心理的な安定』では,自分の気持ちや情緒をコントロールして変化する状況に適切に対応するとともに,障害による学習上または生活上の困難を改善・克服する意欲の向上を図る。『人間関係の形成』では,自他の理解を深め,対人関係を円滑にして集団参加の基盤を培う。特別支援学級の少人数の集団で活動することで少しずつ自分を表現できるように励ましたり,通常の学級でも自分を表現できるようにするため,他者との良好な人間関係づくりを支援したりする。『環境の把握』では,感覚を有効に活用して,空間や時間などの概念を手掛かりとして,周囲の状況を把握したり,環境と自己との関係を理解したり,的確に判断し行動できたりするようにする。静かで落ち着いた環境づくりにつとめていくことが大切である。音に敏感な児童がいるので,机やいすにテニスボールや音を吸収するゴムなどをつけて雑音を減らすようにする。『身体の動き』では,日常生活や作業に必要な基本動作を習得し,生活の中で適切な身体の動きができるようにする。身体を動かすことで,脳が活性化され,精神的に落ち着くことが期待できる。『コミュニケーション』では,場や相手に応じて円滑に行うことができるようにする。場の空気を読むことが苦手であったり,人の前に出ると緊張してコミュニケーションをとるのが難しくなったりする児童がいる。そこで,まずは少人数の集団の中でコミュケーション活動を行いながら,他者とコミュニケーションを取ることに慣れさせ自信をつけさせることが大切である。

3.栽培活動

特別支援学級の教室の前の畑で「ミニトマト」「ピーマン」「きゅうり」「ナス」を育てている。苗の値段は,1本75円で,20本購入で1500円だったので,かけ算やわり算の学習でも苗を使うことができた。

育てている野菜を日本語と英語で学習することで,英語にも1年生のうちから興味を持ってもらう機会にもなっている。スーパーマーケットの広告を使って100円で何個にするかの話し合い活動を全員の集まる自立活動の時間で行った。下の写真のビニール袋に入っている野菜は,レプリカで児童たちが考えた100円分の野菜である。

4.外国語活動の実際

外国語活動の内容は,はじめのあいさつをしてから活動の流れの確認をする。45分間の活動の流れを視覚的に提示し,見通しを立てさせている。そうすることで,児童は安心して,そして集中して活動に取り組むことができる。めあての確認をして,その日の体調について聞く。そして,絵本や紙芝居の読み聞かせを行い,歌を歌い,アルファベット1文字をモールでつくりそれをワークシートに貼って,その文字を書く。その後でゲームを行い,振り返りをして終わりのあいさつをする。例えば,曜日のテーマにした活動では,曜日の単語が出てくる絵本や紙芝居の読み聞かせを行い,曜日の歌を歌って,曜日のアルファベットの頭文字を学習する。曜日のゲームを行った後で振り返りをする。1年生から6年生までの児童が特別支援学級の担任,ALT(Assistant Language Teacher)や介助員等と一緒に活動に参加するので,児童一人一人に声かけがしやすく,自信を持って活動に参加できるようにしている。

5.曜日

Blue Sky 5の教科書のWord List に曜日があり,Let's try2で学習した曜日を復習できるようになっている。曜日の絵カードは,日曜日のカードは「太陽」の絵とSunday,月曜日のカードは,「月」の絵とMondayなど,それぞれの曜日が想像できる漢字の「絵」と「アルファベット」の文字が想像できる漢字が表記されているカードを使用する。アルファベットは,自然に児童たちが目にするよう工夫することで,文字学習の助けになる。

6.歌(曜日)

歌の使用は,英語の発音やリズムの学習に加え,「発声」の練習にもなる。毎回の活動で,同じ歌を繰り返し歌うことで上手になり,英語を音声化することへの自信を高めていく。児童たちの様子を見ながらスピードを速くしたり遅くしたり,前奏や間奏を違う曲に変えたり,Sundayから始まらずにMondayから始めたりするなど,少しずつ変化をつけることで新しいことにもチャレンジさせる。歌いながら身体を動かすようにすることで,体の動きに合わせて歌を覚えることができた児童の姿もみられた。

7.絵本・紙芝居(はらぺこあおむし)

絵本や紙芝居の読み聞かせは,英語の音や表現に慣れ親しませることに加え,落ち着いて話を聞く時間の確保にもつながる。絵本や紙芝居には,英語を聞きながら目で絵を見ることができるので,話の内容を想像しながら理解することができる。日本語訳のある絵本や紙芝居を使用すると,児童自らその絵本や紙芝居を探し読んだりすることができる。Blue Sky 6の「本の人気投票の結果」に"THE VERY HUNGRY CATERPILLAR"が出ており,3年生の理科で「アオムシ」が「チョウ」になるまでの学習をするので,「はらぺこあおむし」の紙芝居を読み聞かせで使用した。「はらぺこあおむし」は,お話の中で,曜日や食べ物も出ており,日本語や英語だけでなく,中国語,韓国・朝鮮語,フランス語,スペイン語,イタリア語,オランダ語などにも訳されている。世界中で使用されているさまざまな言語にふれさせることも大切である。

8.ワークシート

Blue Skyの特別支援・インクルーシブ教育の対応として,色弱者にとって黒と赤は見分けづらいため,4線で強調したい下から2つ目の線は青色になっている。そこで,ワークシートの4線の下から2段目の線に水色の蛍光ペンでなぞることで,文字を意識して書けるような支援も行っている。

9.ゲーム

ゲーム活動では,「遊び感覚」を大切にしている。英語の音声や基本的な表現に慣れ親しませるためにゲーム活動を取り入れているが,勝ち負けにこだわる児童にとっては,興奮してしまう原因にもなるので配慮が必要である。児童が勝ち負けにこだわることなく,全員が楽しめるゲームをするようにしている。例えば,全種類のカードを全員分用意して行うカード取りゲームや,最後は全員が座れる椅子取りゲームなどをしている。グループで行うカードゲームでは,1枚取れたら1回お休みにしたり,最後の1枚は,そのグループで最も枚数の少なかった児童がもらえるようにするなど児童の実態に合わせたゲームを行うようにしている。ゲームが終わった後も,何枚取れたかは聞かず,頑張ってゲームに参加したことを褒め,すべての児童にとって,ゲーム活動は楽しいことを感じ取らせるようにしている。活動を行う際は,ルールは短い言葉で,分かりやすく伝えるようにしている。教材は,絵カード,写真,実物教材など視覚的な支援ができるものを使っている。集団活動を行うことが苦手な児童がいるので,そのような児童もペアやグループでの活動に慣れさせて,通常の学級の授業に無理なく,楽しく参加できるよう自信をつけさせたい。
野菜バスケットゲームでは,名札フォルダーに野菜カードを入れて行った。全員が動く時は,"vegetables"と言うか,野菜のレプリカの入っているカゴを上に上げると全員が動けるようにすることで,場面緘黙の児童もゲームに参加することができる。名札フォルダーは,上の白い部分が引っ張ると外れるようになっており,安全面に配慮したものである。

10.まとめ

外国語活動の集団の中で「個別最適な学び」を実現するには,つまずきが何かに気づくことと,異学年の児童たちが同じ活動をすることで,児童同士が教え,学び合う場面設定をすることで協働的な学びを行うことが大切である。

(参考文献)