小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

学ぶ過程を大切にした授業づくり
~「Blue Skyプチアレンジ」のすすめ~

倉吉市立明倫小学校 池田 香

1.はじめに

私の授業の多くは,教科書を使った普通の授業である。基本的に,教科書と同じ流れで学習を進めている。スモールステップで「考える,分かる,使ってみる」を繰り返しながら,「児童のできることを増やしたい。友だちとのやりとりを楽しみ,お互いの思いや考えを尊重し,心を通わせることができるようにしたい。」そんな授業を目指し,試行錯誤する日々である。
授業づくりにおいて,いつも大切にしていることが3つある。
① 意味と音を結びつけやすいインプットをすること
② ペアやグループ活動を充実させること
③ 思考を伴った言語活動を工夫すること
しかし,私がこれらのことを意識していても,児童にとって楽しくない,やらされる活動となってしまっては,教科書や教材の魅力は半減してしまう。児童も楽しい,教師も楽しい授業を目指して,教科書にひとつ工夫を加えて面白くすることを提案したい。きっと多くの先生方が,当たり前にやっておられることだと思う。でも,この「ちょっとした」工夫,「ちょっとした」声かけこそが,児童の意欲につながり思考を深めるはずだ。拙い実践だが,何か1つでもヒントになるものがあれば嬉しく思う。

2.私が実践した「Blue Skyプチアレンジ」

① 意味と音を結び付けやすいインプット
インプットなくしてアウトプットなし。英語を聞いて児童自身が「こんなことを言ってるのかな」と予想したり,「あっ!こんなときに使うのか」と自ら気づいたりするような経験をたくさんさせたい。そのために,Small Talk(Teacher's Talk)では,写真やイラスト,実物等の言語外情報を活用する。また,意味,内容を教室の一番後ろの席の児童に届けるつもりで,心を込めて,繰り返し,はっきり話すことを意識している。

5年生Unit5 This is my sister. 第3時(3/7)得意なことを言う表現を知ろう。

T1:Today's topic is 得意なこと.Look!I have あやとり here.(実物を見せる)
I like あやとり.
I'm good at… I'm good atあやとり. (×2)
I'll show you.(やってみせる)
I'm good at あやとり.
Mr 〇〇, are you good at あやとり?

ALT:No, I'm not.
As for me, I can cook well. I'm good at cooking.
Look at these pictures. (料理の写真)
I made them.  I'm good at cooking.
〇〇先生, are you good at cooking?

T1:Yes, I am.I'm good at cooking, too.

ALT:Oh, that's great!

6年生Unit4 I went to the zoo. 第2時(2/7) 夏休みの感想やしたことを言ってみよう。

先生たちの夏休みをWho am I?クイズで紹介。(ロイロノート・スクール使用)

身近な先生についての話題は,「聞いてみたい」「知りたい」という何よりの意欲付けになる。
他の単元でも,先生の行きたい国,先生たちの中学校時の部活動,〇〇先生のあこがれの人などについて紹介したが,児童は興味深く真剣に聞いていた。同僚の先生方の協力のおかげでできる活動であり,本当に感謝している。これまで作成したスライドや動画は私の宝である。

② ペア,グループ活動の充実
1時間の中に必ずペア,グループ活動を入れる。単元末の言語活動はもちろん,言い慣れるための練習でも友だちと伝え合う喜びを十分感じさせたい。また,「何の力を付けるためにこの活動をするのか」目的をはっきりさせ,繰り返し目標言語を使う中で,上達しているという実感が持てるようにしたい。

5年Unit1 I have math on Monday. 第3時 3/7 教科名と曜日の表現に慣れよう。

『当てたら勝ちよ,ジャン・ケン・ポン』   参考:『授業が必ず盛り上がる!小学校英語ゲームベスト50』 瀧沢広人著

1人3枚カードを持つ。じゃんけんをして勝った人は,What do you have on Monday?のように 2回質問できる。負けた人は,表の5人の中から1人選んで,その人物になりきって質問に答える。その答えを聞いて相手が誰だか当てる。当てたら相手のカードがもらえる。

このような活動を取り入れる時に気をつけたいのは,速さではなく活動の質。「チャンピオンは〇〇さん,拍手~!」のように,指導者が勝負を意識させると「何度も英語を使って表現に慣れる」という本来の目的が誤って伝わってしまう恐れがある。活動後は,英語を使って友達と積極的に関わり合って学べたことを価値付けたい。「素晴らしい学び方でした。頑張った自分と友だちに・・・さんはい」「(パン)(パン)グッジョブ!」くらいがいい。また,困っている友だちをサポートしながら活動している児童や,速さではなく丁寧に伝えようと誠実に頑張っている児童が必ずいる。そんな姿を大いに褒め,全体に広げたい。

5年Unit6 I'd like pizza. 第3時 3/7 食べ物の味や特徴を言う表現を知ろう。

『マジカルクイズ』   お題 (ロイロノート・スクール使用)

ペアの友だちにヒントをもらい,お題の食べ物が何かを当てる。ジェスチャーもOKにすると,苦手な児童も必死に伝えようとする。知っている語彙を使ったり,ジェスチャーを加えたりして,何とか伝えようとしている姿を褒めまくる。

「豆腐」のお題では,味が伝えにくかったからか,苦戦しているペアが多数あった。こういう難しさの中にこそ楽しさがある。「え~と…う~ん…あっMiso soup!! White! (ほら,あれあれ!)」難しいからこそ,伝わると嬉しいものである。また,「…(四角って,何て言うんだっけ?)」と悩む子もあった。早く当てた児童にどんなヒントだったのかを尋ね,使った語彙や表現を全体で共有することで,「あ~!スクエア!」と自分で気付くことができた。言いたいけど言えない,伝えたいことはあるが伝わらない,もがきながら自分でつかみとっていく過程を大切にしたい。同時に,完璧を求め過ぎず,ミスや間違いはあって当たり前,それこそが学びなのだという指導者の視点も忘れずにいたい。

③ 思考を伴った言語活動の工夫
思いや考えを持たせやすい具体的な場面設定を工夫する。教科書の言語活動をベースにしつつ,何か1つ工夫を加えて,児童はもちろん指導者にとっても「伝えたい」「聞きたい」と思える活動を設定したい。

5年 Unit3 I get up at 7:00. 第2時 2/7 クラスで1番早起きの人を探すために,友だちインタビューをしよう。

加えて,「平日」と「土日」のどちらの起きる時刻を聞いてみたいか,児童に選ばせた。(「土日」が圧倒的多数だった)時には選択肢を用意して,児童に選ばせることも意欲につながる。

We have two patterns. 「平日」or 「土日」 Which do you want to ask?

参考:【モトヨシ先生のNEWスライドde外国語】「小6らくらくUnit 2「My Daily Schedule」②

6年 Unit7 I want to be a fashion designer. 将来の夢スピーチをしよう。8年後の自分に手紙を届けよう。

参考:「Blue Sky」アレンジレシピ集
将来の自分の姿を描いたイラストも作成し,ペアで将来の夢やその理由を伝え合った。英文だけでなく,イラストでも表現することで,職業についてのイメージを膨らませたり,ペアで伝え合う際にイラストを指さしながら工夫して伝えようとしたりする姿が多く見られた。
完成したワークシートは「8年後の自分へ」と記した封筒に入れ,20歳の自分に届けるようにした。

3.おわりに

「はじめに」で書いたように,私の行った「Blue Skyプチアレンジ」は何も特別なことではない。また,私自身この実践がベストだと満足しているわけでもない。日々の授業では,上手くいかないことや悩むことの方がまだまだ多いのが現実である。全国の先生方から「もっとこんなやり方があるよ」とか「こうしたらどう?」とか様々な方法を教えていただきたいし,私も自分の実践をブラッシュアップしていけるよう前向きに学び続けていきたいと思っている。

また,言うまでもなく言語は間違えながら身につけていくものである。「外国語」の授業はチャレンジや間違いを求められる教科とも言える。だからこそ,子どもが間違えた時,分からなかった時,失敗した時…それらを価値付ける言葉をたくさん持っておきたい。教師のちょっとした声かけが,学級の風土を作ると思うからである。「チャレンジしたからこその間違い,ナイストライ!」「分からないのは考えている証拠」「できないことができるようになる,それが勉強です」子どもたちの心のコップを上に向け,一人一人に合った最適な言葉を届けられる教師でありたい。分かってもらいたい相手がいる。伝えたい関係性である。そんな前提条件が,コミュニケーション力を高め,表現力を引き出すと信じている。

【参考文献】