1.はじめに
- 図1 キャップの塔
これは,子どもたちがボランティア委員会を中心に集めているペットボトルのキャップを使った塔である。子どもは,このようなものを使って何かをつくるのは大好きなようで,いろいろな塔をつくっていく。
よく見ると,キャップが互い違いに積み重ねてあり,何らかの規則性がありそうだ。
そこで,美しく積み重ねられた塔の形を調べてきまりを見つけたり,式や表から積み上げた塔の形を再現したりして,算数を楽しむことができそうだと考え,この実践を行った。
小学校学習指導要領 算数編には,以下のようにある。
数量関係領域では,「関数の考え」,「式の表現と読み」及び「資料の整理と読み」が主な内容となっている。また,それらにおいて,数量やその関係を数,式,図,表,グラフなどの表したり調べたり,言葉を用いて表したり調べたり,判断したり説明したりすることができるようにすることが大切である。(中略)
また,式を読み取ったり,言葉や図と関連付けて用いたりすることも大切である。
資料の読みについては,目的に応じて資料を集めて分類整理したり,それを表やグラフなどに分かりやすく表現したり,特徴を調べたり,読み取ったりすることができるようにすることが大切である。
(小学校学習指導要領解説 算数編より引用)
子どもは問題場面を前提として,式や表に表されたものから具体的な数量の変化をとらえていく。塔の形を取り上げることで,式や表と現実場面とをつなぎ,具体的な形として式が表すものの1つの見方を楽しく示していきたいと考えたのである。
2.児童の実態
本実践の対象児童は,どの教科においても,活動に前向きで,楽しむことができる。たくさんのペットボトルキャップを前に,どんどん積み上げながら塔づくりを楽しむ。算数の比例の学習においては,式や表だけでなく,文字の式にも表現して比例の関係をとらえようとしていた。子どもは,問題場面を表や式に表すことで,きまりが見つかること,それによって未来が予測できることなど,比例における表や式のよさを学習してきている。また,学校はベルマーク運動や,空き缶回収などの活動がさかんで,ペットボトルキャップを集める福祉活動にも参加している。
3.実践事例
本時は,ルールに合わせて塔をつくることを伝える。
ルール
○塔は上から1段目2段目と数える。(x)
○その段にあるキャップの数を個数とする。(y)
教師の働きかけ | 子どもの反応 | ◆第1問 |
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さて,どんな塔になりそうかな? |
◇? | ||||||||||||
◆式だけではわかりにくいので,表に表してみよう。
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◇1つずつ増えている! ◇わかったよ!これならどんどん高くできそう! |
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◆5段目は予想できるかな? | |||||||||||||
◇5段目だから5個。同じ数になる。 |
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◆第2問 | |||||||||||||
次は表を見て考えてね。
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◇え?ずっと5? ◇さっきみたいには積めないよ。 ◇あ,わかった!ヒントは円。 |
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◆式はどうなる? |
◇y=5x?ちがう… ◇y=5!(すごい!) ◇xが式の中に入らないこともあるんだね。 |
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◆第3問 | |||||||||||||
ピラミッドみたいな塔つくれる? |
◇つくれるよ! | ||||||||||||
◆あれじゃなくて,こんなの。(四角錐を見せる) |
◇え?さっきみたいなの? ◇できたよ。 |
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◆これは,どんな式になるのかな? |
◇待って,表にしてみる
◇2×2=4,3×3=9になっている。 ◇y=x×xだ。 |
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◆上から見るとどんな形? |
◇正方形みたい・・・正方形の面積! |
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◆第4問 |
◇まずは,表。
◇1問目のようには積めない。 ◇2段目が3個だから三角? ◇できた!ヒントは三角! |
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◆5段目の個数が分かる? |
◇この三角が1つ大きくなるから・・・ ◇15 ◇式からもわかるよ。 |
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◆他にもこんなのもあるよ。 |
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◆いろいろな積み方を見つけてきまりを見つけてみましょう。 |
◇やっぱり2段目が3個だから三角? |
4.おわりに
この授業は,式から積み方を発見したり,表から積み方や式を見つけたり,積み方から式を見つけたりしながら,抽象と具体を行ったり来たりして楽しめた。
算数はとても便利で美しいものだから,いろいろなことが,算数を使うことで,とても簡単に解決できる。私の学校でも,「算数は苦手」という声を時々耳にするが,教師も子どもも一緒に算数を楽しむことができることを願って,授業をつくっていきたい。