学習指導要領の改訂にあたり,「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点から生徒の取り組みを評価するよう整理され,来年度より単元別の目標を設定し,その学習内容に照らして生徒の目標実現状況を観点ごとに評価しなければならなくなった。いくつかの研修に参加したが,三つの観点での評価方法についてまだ理解できていないことも多く,学期ごとのペーパーテストの取り扱いや回数に加え,パフォーマンス課題やその評価方法などの悩みも多い。ペーパーテストは「読むこと」をベースにして作られている。週に1度だけ授業内でのリスニングのテストも行っているが,これだけで十分でないことは明らかである。どのような授業を行い,テストの形式は何が最適なのか,本来の「読む力」・「聞く力」を養えるようなパフォーマンス課題 とは,一体どのような課題なのかという疑問を持ちながらではあるが,今回はRevised LANDMARK English CommunicationⅡのLesson5“Science of Love”においては「話すこと(発表)」,Lesson8“Edo : A sustainable society”においては「書くこと」に焦点を当て,自分なりに考えた,本校の生徒の学習到達レベルに合わせたパフォーマンス課題を考えていきたい。
Revised LANDMARK English CommunicationⅡのLesson5“Science of Love”を用いて授業を行った。Lesson5では,なぜ私たちは恋に落ちるのかという身近な疑問に対し,三つの異なる学説を用いて説明がされている。『精神医学からの学説』や『遺伝学からの学説』,『生物学からの学説』など,本校の生徒にとって,単語を調べ,文法を説明し,教科書だけを使って読み進めるだけでは少々理解が難しい内容であると感じた。そこで,教科書で説明されている学説を視覚的補助(スライド)を用いて他者に伝えることをパフォーマンス課題に設定した。
Lesson5を扱うのが,夏季休業明けの2学期であったため,事前に生徒たちにはパフォーマンス課題の目的と方法について説明を行った。そして,役割分担をし,どのようなスライドを作成し,どのように原稿を作成していくかの説明をした。通常の授業内で準備を進めるには,時間数が足りないため今回は夏季休業課題として,生徒たちへパフォーマンス課題の準備をさせる形を取った。
このパフォーマンス課題を実施するにあたっての教師と生徒の役割は以下の通りである。
教師 | 生徒 |
---|---|
1.役割分担を決める | 1.担当パートの日本語訳 |
2.Lesson5の単語・イディオム表の作成 | 2.スライド案の構成 |
3.Teamsに音声(単語・音読CD)をアップする | 3.スライド作成 |
4.生徒が作成したスライドと原稿のチェック | 4.原稿作成 |
5.発表指導 | 5.原稿の暗記(ジェスチャー含む) |
6.授業で使うワークシートの作成 | 6.発表練習 |
普段からの総合的な探究の時間でのパワーポイントの操作に慣れているため,スライドは非常に見やすく,大切な情報を絵や図を用いながら作成することができていた。また,原稿も教科書を引用し,理解が難しいと思われる単語は日本語で言い換えるなど,1年次で指導した発表のコツをよく覚えており,実践に移せた生徒が多かった。
発表を聴く側の生徒もこまめにメモを取り,質問に対して積極的に反応していた。発表後の意見交換の際も発表者の良い所を具体的に取り上げ褒めることができた。
Revised LANDMARK English CommunicationⅡのLesson8“Edo : A sustainable society”を用いて授業を行った。現在,教科書はもちろんその他の本や新聞,ニュースやお店などでもよく耳にする言葉『SDGs』と関連付けられる教材であったため,生徒は比較的スムーズに内容を理解できた。Lesson5のように本文を自分たちで読み,プレゼンをするのではなく,『書くこと』に焦点を当て,新聞を作成することにした。4時間の授業の中で,新出単語,文法,内容理解を済ませ,新聞作成の時間として3時間を確保した。
新聞を作成する際に,以下のようなルールを決めた。
出来上がった新聞を回し読みし,最優秀賞・優秀賞・奨励賞・アイデア賞の4つを選出するようにした。全員が自由に投票できるよう,コメントシートと投票用紙を作成した。回し読みの際,生徒からは「すごい!!」,「絵が上手で分かりやすい!」,「このアイデア真似したい。」,「分かりやすい英文で書かれていて簡単に読める。」などのポジティブな発言がどんどん出てきた。
2つの活動の中で生徒は熱心に活動ができ,制作物も,プレゼンテーションも一生懸命に取り組むことができた。しかし,プレゼンテーションを作成し,原稿チェックや練習をするための時間がかなり必要になる。来年度は生徒が3年生になり,受験を迎える。そういう環境の中で受験する大学の入試問題に対応でき,コミュニケーション英語の活動での成果がでたと実感できるような活動を考えていかなければならない。「楽しかった」だけで終わらない授業を目指していきたい。
また,何がどのように評価されるのかという不安を取り除けるように評価の観点をしっかりと生徒に事前に示し,課題や授業に安心して取り組めるようにルーブリック評価を入念に作成する必要があると感じた。