授業での学生の質問です。学生いわく,「どうして,truth にはthe,lieには冠詞aがつくのですか」。啓林館英語教科書,Element English Reading : Reading Skills Based ,27ページの次の一文です。
"More or less, we ourselves are forced to become the ultimate judge of what is the truth and what is a lie." (Lesson 4 The Diversity of Lying)
質問は続きます。「本当のことを言うは,tell the truth,ウソをつくは,tell a lie。 Tell a truth と言えないのですか」。その場は,「ウソはたくさんつけるが,真実は一つ」,と答えました。学生は妙に納得しましたが,学生が納得した分不安になりました。何しろ冠詞は難解です。一筋縄で行かないのは承知です。調べてみました。
Lieは可算名詞です。よって,単数形には冠詞aがつき,複数形にはsをつけます。A pack of lies(嘘八百)と言うように,英語の世界でもウソは数えられるわけです。
しかし,truthは可算名詞にも不可算名詞にもなります。
"Do you promise to tell the truth, the whole truth, and nothing but the truth?"
「あなたは真実を,すべての真実を,真実のみを証言することを誓いますか」
法廷で裁判官が証言者に対して聞く決まり文句です。「本当のこと」,「(事の)真偽」という意味では,不可算名詞になり,特定されますのでtheがつきます。高校で習うお馴染みの定番フレーズ to tell (you) the truthも同様です。不可算名詞,冠詞 はtheです。裁判官でなくとも真実が複数あっては困ります。だから冒頭の学生の質問,"tell a truth"は不可になるわけです。
一方,可算名詞としてのtruthは,どんな場合でしょうか。個々の事実(facts)と言う意味合いでは可算名詞の扱いになります。たとえば,facts of the case(真相)の代わりに,一般的でないですがtruths of the caseも可です。
最後に,「インド独立の父」として知られるMahatma Gandhiの言葉を贈ります。
"Truth is one, paths are many."
「真実であること」,つまり真理と言う意味では,無冠詞です。
「不変の真理」,と思います。