モリアオガエルの保護繁殖活動
兵庫県西宮市立山口中学校
上田 浩司
1.はじめに
 今から約30年前,帰宅途中の理科部の生徒が見慣れないカエルの死骸を見つけた。その死骸を顧問の先生に見せたところ,モリアオガエルという珍しいカエルであることがわかった。
 翌年には,山口町中野地区の池で卵塊を発見し,モリアオガエルの生息が確認された。そのようなことがきっかけとなって山口中学校理科部のモリアオガエル保護繁殖活動が始まった。
 平成元年には,この保護活動に対して環境庁より「ふるさといきものの里」に認定された。
 活動を始めた当時は静かな山村だった山口町にも中国自動車道が通り,山が切り開かれて住宅地になった。さらに,阪神高速北神戸線が町内を通る工事が始まるなど,人口・自動車の交通量が共に増え,町の形も大きく変化した。それに伴い,モリアオガエルの生息分布も変化してきた。しかし,現在でも緑が多くホタルが多く生息するなど,西宮市内では自然の豊かな地域である。

2.モリアオガエルとは
 両生類アオガエル科に属するカエルで,本州・四国などの山地に住んでいる。兵庫県内では三田市,川辺郡猪名川町など10カ所程度で生息が確認されている。東北地方の一部では,天然記念物に指定されている。
 6〜7月ごろ,池や水田にせり出した木の枝に泡で包まれた卵塊を産む。卵塊の中でかえった幼生は下にある池に落ちてその中で育つ。卵に関しては,両生類とハチュウ類の中間的な性質を持っていると思われる。

写真1 モリアオガエル

3.年間活動内容
 
1) 6月上旬ごろ,モリアオガエルの生息地に出向き卵塊を10個程度採取する。木の枝についている卵塊を枝から離れないように注意しながら採取するが,念のため網で受けるようにしている。

写真2 卵塊

写真3 卵塊を採取

2)

 校内にある飼育施設に持ち帰り,枝についた卵塊を理科実験で使用するスタンドにつるす。毎日,卵塊の乾燥防止のため霧吹きで水をかける。この作業は孵化するまで行う(自然の中では,梅雨時期の雨がこのはたらきをする)。

写真4 小屋内風景

写真5 孵化の様子

3)

 孵化後,おたまじゃくしは下の水槽内に落ちて泳ぎ始める。2〜3日たつと餌を食べ始める(餌はベビーフードを使用)。その後,おたまじゃくしに後足が生えるころまで生徒たちは大事に飼育する。

写真6 手のひらのおたまじゃくし

写真7 手足が出始めたおたまじゃくし

4)

 7月上旬ごろ,元の池に放流する。「また戻ってこい」などという生徒もいる。

4.実践のまとめと今後の課題
 
身近に生息している「モリアオガエル」を通して環境を考えさせたい。卵塊の数,1つの卵塊から孵化するおたまじゃくしの数,産卵時期,気温,雨量,その他の自然現象(地震など)の関係を考えさせたい。
地域の公民館活動と連携させていきたい。幼稚園や小学生だけでなく,保護者にも,「モリアオガエル」に触れることで自然に親しんだり,生き物たちを愛する心を育むきっかけになればと思う。

写真8 放流風景

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