授業実践記録

数学的活動を楽しみ,かかわりの中で考える力を高め合う授業 〜「図形と相似」パンタグラフを使った授業の実践を通して〜

鹿児島県伊佐市立大口中学校
山ア 晃

 

1. はじめに

 これまで,算数・数学科における小・中連携の推進を柱とした研究を行ってきた。しかし,授業において,これまでの学習と本時の学習とのつながりがつかめず,解決の見通しをもつことができない生徒がいるという実態がある。このことは,他の領域の学習内容との関連が深い「数量関係」領域において,特に課題であると感じている。そこで,学習してきたことを関連付けさせる指導を行うことで,これまで学習したことを生かして問題を解決していく力を身に付けられるのではないかと考え,本研究に取り組んだ。

 

2. 研究の実践

 第1学年における実態調査では,伴って変わる二つの数量の関係を言葉の式で表す課題の通過率は38%と低かった(図1)。そこで,検証授業において,「比例と反比例」単元導入のオリエンテーションの場面で小学校の学習内容を振り返らせ,課題解決の足場づくりを行うことで本時の学習課題の解決に向けた見通しをもたせる。

過程 主な教師の働き掛けや生徒の反応など(第1学年「比例と反比例1/13」)
発問例
「小学校の比例の学習ではどのような事を学びましたか?」
「忘れた人は近くの人と話し合ってごらん。」
「小学校で学習した学習課題を解いてみよう」



〈考察〉

 単元導入時に振り返りの場を設けることは,これまで学習してきたことを想起させ,本時の学習課題の解決に向けた見通しをもたせることに有効であったと考える(図2)。その際,効果的なワークシートを用いて振り返りを行わせることで,生徒は視覚的に学習のつながりを実感し,抵抗なく比例の関係を文字式で表すことができていた。

 

3. 検証授業後の生徒の変容と考察

 本単元の指導を通して,学習してきたことを振り返らせ,本時の学習と関連付けさせる指導を行った。また,前時で学習したことを本時の学習に生かして考えさせたり,他の領域で学習した学習課題を意図的に取り扱ったりすることで生徒の意識に変容が見られた(図3・4)。

 

4. 研究の成果と課題

(1) 研究の成果
 これまでの学習と関連付けさせる場を,意図的に単元の指導計画の中に設定したことで,単元の指導を通してどの場面でこれまでの学習と関連付けさせるかを明確にした指導を行うことができた。その結果,これまで学習してきたことを生かして問題解決を図ろうとする生徒の姿が見られ,生徒の「数量関係」領域における興味・関心が高まった。
(2) 研究の課題
 「数量関係」領域を中心とした研究の手法を使って,他領域における指導内容の系統についても今後明らかにし,他領域の指導内容とどのように関連付けていくかを実践,研究していく必要がある。

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